トイボックス エンヂニアリング

組込みハードウェアエンジニアが語るブログ

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トラ技2018年7月号を読んで思い出した事。アートワークは誰の仕事か?

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今月のトランジスタ技術を見て思い出した事を書きます。

2018年7月号

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今月の特集は「プリント基板制作」です。

いつもの会社帰りの本屋で立ち読みをしたのだが、KiCAD推しも以前から変わっていないようなので買うつもりもなく、ぱらぱらと読んでいたら、身に覚えのある内容で、且つ、実務上はここまで言及して話題にしたこともないような記事があったので、EAGLE派にもかかわらず、購入してしまいました。

特に「オームの法則で基板を読み解け」「寄生コンデンサ」「パスコンについて」(いろいろ略)などなど、無意識に意識していたことが書かれていました。(実はまだ立ち読みレベルでしか読んでないけど。)

 

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私が新卒で入社した会社は、ハードウェアエンジニアの仕事には以下の業務がありました。

・機器全体の電気的なシステム設計

・基板回路設計

基板アートワーク(物理設計)

・部材の選定と試作部品発注

・ハーネスの設計

CPLD,FPGAの設計

・試作の組み立て

・試作筐体のQC試験

・基板、PLDのデバッグ

・生産ジグの設計

・量産部品のコスト交渉

・パーツリストの作成

・ドライバの作成

 ・生産用の機器の組み立て図面の作成

などなど。

けっして、小さな会社ではありませんでしたが、会社が大きくなる過渡期で、零細企業てきな側面を実務上残していたのでしょう。

なので、開発の初めから生産立ち上げて初期ロットが市場に設置されるまで、常に忙しい状況でした。

また、私の先輩達は、入社当時こそ何名かいましたが、3年もするとみな、新規事業の立ち上げや転職などで居なくなり中途を除くと職種のなかで私が一番古い人間になって居ました。

 

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そんな私に、中途入社の他業界から来た人は、なんで、ハードウェアエンジニアが基板のアートワークをやってるの?

なんで、ハーネスもハードウェアエンジニアなの?

しかも、当時、ハーネスの一次試作は手作業で作っていたり、試作基板の部品実装も自分で半田付けしたりしていました。(当時はBGAなどなく、自分で全部半田付けできました。)

 私はプロパー社員で、同職種の他の会社のエンジニアがどのような仕事内容なのかは全く知りませんでした。

なので、実務上、回路設計の後に、アートワーク(物理設計)をするのも当然で、4層基板までは、自分でパターンを引いていました。よくわからない時代は、クロックとリセットだけ手動で引いて、あとはオートルーターに任せて帰宅後、翌日に「3本引けてない・・・」と迷路を解くように配線をしたものです。(今考えると恐ろしい)

まだ、動作周波数が33MHz(CPU内で66MHz)くらいだったので、適当につながっていても動いていました。

 

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そんなこんなで、基板のアートワークは外注、ハーネスの試作は外注となりました。

時を同じくして、6層基板の時代になり、パッケージもBGAになり、とても自分では、配置配線はできない時代になりました。(↓当時作っていた基板の一部)

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前置きがとても長くなってしまいましたが、とはいっても、果たしてアートワークを自分でやっていたことがすべて無駄だったか?というと、そうでもなく、

外注のオペレータに頼むにしても、設計指示書を書かなければならないし、荒唐無稽な部品配置をしたら、外注のオペレータもスムーズに配線をすることができず、その後のやり取りの往復が増えてしまいます。

 

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転職した今となっては、基板の配線はすべて中国の工場にお任せしていますが、国内で外注に出していた時、もしくは自分で設計をしていた時代のノウハウは今でも生きていますし、ましてや、自作のエッチング基板を作るうえでは、非常に役に立っています。

 

果たして、あの経験がないまま、外注に指示を出せるエンジニアになっていたかどうかはなはだ疑問です。はじめからそういう会社に入社している人は、どうしているのでしょうか?(そういう会社はそういう会社で、外注に指示を出すノウハウがあるのかもしれませんね。)

 

題名の『アートワークは誰の仕事か?』の私の解答は、プロのオペレーターの仕事です。

ただし、人の仕事を理解するには、経験してみるのが、一番身にしみて理解できる、と思います。未経験者は簡単な両面基板あたりで、経験してみるのが良いのではないかと思います。(でも、普段外注している環境にはアートワークの設計環境がないですね、、、)

 

吐きそうになりながら、日がな一日、基板の半田付けをしたり、明け方までかかって、残り一本の配線をちくちくと配線したあの日々。ああ、すべてが懐かしい。